水平線に手が届く

鴻巣市のいじめ事件記録【誰かが被害を繰り返さない為に】

【鴻巣市いじめ事件の記録No.3】

10月1日夕方頃、先月校長先生が約束してくれたいじめの対策をしていただけておらず、息子が引き続きいじめに遭っていることが分かったので、私と息子は学校に向かいました。そして会議室に通されると、別室からいじめを行った児童の保護者の怒鳴り声が聞こえて来ました。

 

何が起きているのか、別室にいた私たちは分かりませんでしたが、何かが予想外の事が起こっている不穏な気配を感じました。

 

その後、教頭が私たちのいる会議室に来て、こう言いました。一人の保護者が教頭先生に「どれだけ待たせるのか、いじめているのはうちの子だけではない、他にもいる、なぜうちだけ謝るのか!」と叫んでいるということでした。

 

教頭先生がはじめ全家族合同で話し合いをしましょうと提案したのですが、あの状態で本当に冷静な話し合いが出来るか分かりませんでしたし、責任と問題の所在を明確にするためにも、個別に面談した方が良いのではないかと私から言いました。

 

私はあくまでも、子どもたちの間に先生が入って、その話し合いの中でいじめをもうしない約束をしていただく対応を想定していたので、怒鳴り声をあげている保護者の様子はまったく予想の範囲を越えていました。

 

ここから状況は膠着してしまいました。この間、私たちは担任と他教科の先生にいじめの内容を聞いてもらっていました。息子は「毎日、Cが後ろから来て、いきなりジャージのズボンを下される。下着が見えて嫌だった。恥ずかしかった。」という話を打ち明けました。(学校に着くとジャージに着替えて1日を過ごします。)私が「ズボンのどこを触るの」と聞くと、ジェスチャーを交えて、「ジャージの横の線のところを掴んで下される」と話しました。

 

一方、サッカー部顧問兼担任は私に向かって、「~君(息子)、キーパーのグローブを何度も変えてますよね?」と言ってきました。おそらくサッカーを頑張っているという意味なのかもしれません。しかしグローブが何度も破れる様子をそれだけつぶさに観察しているにも関わらず、息子が部内でたったひとりだけユニフォームも練習着も着ていない状況に気付かなかったのでしょうか。私はこの時、この担任の言葉に不信感を抱きました。

 

そうこうして、1時間半が経過した後、教頭先生が会議室に入ってきて、一方的に「話し合うどころではないと判断したので、相手の保護者に帰ってもらいました」と事後報告を受けました。私はこの時、学校も大変だな、申し訳ないなという想いから、「学校は板挟みになっていますね」と言いました。すると他の教師から、「そうなんですよ!学校は板挟みなんです!」という相槌を受けました。

 

また教頭先生は先ほどの報告に続き、「3名は親が来てから、初めの考え(いじめを認めたという考え)が変わってしまったようだ」という証言も貰いました。そして、私と息子が帰ろうとした時に、突然、校長先生が姿を現し、今日はすみませんでしたとだけ簡単に言われました。

 

2019年10月4日。先ほどの面談から3日間が経過していました。息子は完全に学校に行けない状態となっていました。この間、学校側からは何の連絡をいただけませんでした。私が、「その後3人の家から連絡はありましたか?」と聞くと、教頭先生は「ありません」と言いました。

 

続けて私は「いじめの件はどうなっているのでしょうか」「3名の児童と保護者に謝罪の気持ちがあるのか聞いてほしい」と言うと、教頭先生は「私には出来ません。お母さんの電話番号を3人の家に教えて良いか」と渋々言われました。この時の応対内容は、まるで学校側が先ほどの対応の失敗によって「もう何もしない事にしよう」という取り決めを行ったかのような、取り組みへの意志が感じられないものでした。

 

私は「学校で起こったことなので、学校が間に入って連絡をしてもらいたいです」とお願いをしました。するとまた渋々といった様子で、学校側は了承をしました。しかし、いじめを行った児童の保護者は話し合いの日にちについて、自分たちの都合のものばかりを選び、4日後、5日後の日にちを指定しました。そうすると息子は10月1日から8~10日間も学校を休むことになってしまいます。

 

学校の取り組みへのやる気の喪失もそうですが、いじめを行った児童の保護者側の誰からも謝罪を行いたいとする姿勢が無いという事に、私は改めて驚きました。保護者たちがこの件で素知らぬ顔をし続けるというのは、我が子を守りたいという一心で、相手を無視する、いじめを無かった事にするという選択をしたのかもしれません。

 

しかし、直接的な暴力、人を傷つけるような悪口が毎日、小学校から今まで続いていたという明確ないじめ行為を訴えたのに、学校が対策も調査もしてくれないという状況は想像もしていませんでした。そもそも、いじめを受け続けていると告白した被害者に対して、「それは個人的に話し合って解決してくれ」と応じる学校は他にもあるのでしょうか。今思えば、仮に保護者から指定された4日後、5日後に話し合いの場が設けられていたとしても、そこで調査や対策は絶進まなかったと思います。

 

またこの学校の対応とその姿勢には、今になって改めて考えてみますと、法的な問題も浮上します。校長や教師はその教育活動において、「生徒に対し、生徒の生命・身体の安全を守るべき義務を負う」とされています。これは、総じて、安全保持義務、安全配慮義務、安全確保義務、安全注意義務などと呼ばれています。要するに、「校長や教師などの教育従事者は、学校で学ぶ子供たちの心身の安全を守らなければいけない」という法的な考え方があるのです。

 

仮に校長や教師が、いじめを看過したり、放置したりすれば、それは義務懈怠による不法行為債務不履行という罪に該当し、主に民事上の損害賠償責任に問われます。これは明文化された規範ではありませんが、学校教育法や憲法の精神においても趣旨・条理・信義に沿った罰則であり、司法の世界では一般的なものとして考えられています。

 

ですから、相手の保護者はその義務を負っていないにしても(それでも人の親としての確かな心があれば対応をしてくれるように思いますが)、学校がまるで我関せずとでも言うように、私が電話をしない限りは一切としていじめの対策と調査をしなくなったのは、違法行為であるとすら言えるのです。

 

所が変わってフランスでは、2022年3月から学校でのいじめが刑法によって明確に「犯罪」と規定され、13歳以上のいじめ加害児童は5年以下の拘禁刑及び最大7万5000ユーロ(約1200万円)の罰金が課せられます。それと同時に、いじめ被害者を徹底的に守る為、対象となった加害児童は転校となります。いじめを受けた被害者が学校に残り、いじめを行った加害者が学校を去る。当然の正義の在り方、当然の教育の在り方だと思います。

 

しかし、私たちの場合は逆でした。いじめを受けた息子は学校に行けなくなり、いじめを行っていた人たちは学校に残りました。この理不尽な状態が、1日、1日と過ぎていきました。

 

(次回へ続く)