水平線に手が届く

鴻巣市のいじめ事件記録【誰かが被害を繰り返さない為に】

【鴻巣市いじめ事件の記録No.6】

息子は不登校になって、学校からの対応がない日々が続く中で、堰を切ったかのように、これまでのいじめの内容を次々に話し始めました。小学校6年生から、Aから執拗な暴力が始まって、それが日常的に繰り返されていたと言いました。

 

毎日、Aは息子に対し、背中、腹部、腕、脛、太腿、臀部などを殴る蹴るの暴行に及びました。日によっては、腹部を強く殴られ、その痛みで卒倒したり、脛を蹴られて痣ができたりといった暴力もされていたと話しました。

 

放課後に3階の教室から昇降口までしつこく通せんぼされ、帰れないようにする。どいて欲しい旨を伝えると、腹部を殴られる、脛を蹴られるといった暴力を受けました。「女子を殴って来い」と命令され、それを断ると、背中を押されて相手の女子の目の前に連れて行かれました。その都度、息子は逃げていました。

 

死ね、クズ、ザコ、バカ、アホ、カス、キモイなどの暴言も日常茶飯事でした。AだけではなくDからも通せんぼをされ、昇降口に着くとDから羽交い絞めにされて、靴を持って行かれてしまうこともありました。校門ではランドセルを掴まれ、延々と帰れないように邪魔をされました。

 

クラブで移動教室になる時は上履きを脱ぎますが、その上履きが隠されることも日常的でした。遠くに持って行かれてしまうので、先生に一緒に探してもらうこともありました。その時、先生がDを呼び、注意をしたということもあったそうです。その後、Dが先生の前で息子に謝ったこともありました。

 

Aから心臓を殴られ、倒れた時、Aが笑いながら大丈夫?と言ったそうです。このAは中学でも同じクラスとなりますが、その少し前、中学の見学の時にクラスで並んで歩道を歩いていたら、前にいたAが振り返って笑いながら片手で車道に押し出したこともありました。車がここで来ていたら轢かれる所でした。このAからのいじめは特に長く、息子が中学校に上がってから不登校になるまで、毎日ずっと続きました。

 

息子は当時「学校は行かないといけない所だ」という強い義務感を持っていたらしく、また「チクった」ことによって更にいじめがひどくなるという恐怖感もあって、いじめのことを口に出さず、我慢し続けていたそうです。(息子は以前、いじめのことを担任の先生に言ったのですが、それによってAからいっそういじめられるようになりました。)

 

息子の言葉のひとつひとつを聞きながら、私は心の底から悲しく苦しい気持ちで一杯になりました。私は「お母さん、~がこんなにいじめられていること知らなかった、ごめんね」と謝りました。息子は「大丈夫、あいつらが悪いから」と言いました。

 

息子の話を聞き、元々知り合いだったD君の保護者に再びLINEでメッセージを送り、やり取りをしました。D君に通せんぼされたこと、靴を隠されたこと、先生に一緒に探してもらい、先生の前で謝ってもらったことなどを伝えました。保護者から「あの時は息子にも私にも辛い想いをさせて申し訳なかった」と返事がありました。

 

私は「ほかに誰がいじめをしていたのでしょうか」と聞くと、保護者は「クラス男子全員と女子1名」という返事が返ってきました。息子にそれを聞くと、「全員からはいじめられていない」と言いました。

 

私が保護者にD君から悪口を言われていたことを話すと、それに対して保護者は「息子からも言われている」と答えました。「息子はいつも先にD君から言われたので言い返していたと言っています」と伝えると、「Dから先に言ったようです。申し訳ありませんでした」と言いました。

 

続けて、私は暴力の件を聞きました。暴力を見たかと聞くと、保護者はAともう一人の名前を挙げました。それについては、息子が言っていた2名と一致をしました。翌朝となり、保護者から「はっきりとは覚えていない」というLINEのメッセージが来ました。

 

しかし、このD君の保護者は後日、出先で偶然出くわした際は調子が変わっており、「他の家に迷惑が掛かるから言えない」と言いました。これが彼女の本音であったと思います。

 

加えて、彼女は「うちの件は警察に謝っている」「もう終わったことです」などと言って、いじめ行為に対する謝罪がありませんでした。傍にいたD君の父親が目を反らして「行こう」と促し、逃げるようにそこから立ち去ってしまいました。(警察に謝ったという彼女の言葉の真意はよく分かりませんが、このいじめ事件に警察が関わった事がありましたので出たものだと思います。警察の件は後の記事で改めて記します。)

 

また、この保護者は私の代理人(弁護士)に対して「他の子も~君(息子)をいじめていて、うちの子の関わりは相対的に低い」とも言いました。いじめに関わりが高いも低いもあるでしょうか。いじめはいじめです。

 

保護者は自分の子供がいじめの当事者であり、また元々知り合いだったという事もあって、ある程度は正直に話してくれた部分もありましたが、一方で出来事の責任については終始お茶を濁されていたような気がします。

 

この後、私は息子が小学校を卒業して以来、初めて母校に足を運びました。小学校の時のいじめの状況を知るためです。小学校の教頭先生、元担任、学年担任が対応をしてくれました。息子は小学校6年生の時、自分がいじめられていることを担任に何度も言ったと言っていました。また、いじめられていることをアンケートに書いていたとも言いました。そして、担任はAが悪口を言っている現場を何度も見聞きして、その都度注意していたと言いました。つまり、中学校だけではなく、小学校でも、息子のいじめを看過しているような状況だったのです。

 

学年担任はこれに対して、「何も知らなかったわけではない」という非常に曖昧な言葉を述べました。私は「アンケートが残っているか(息子がいじめられている内容を書いたもの)」と聞くと、教頭が「アンケートはない」と即答しました。暴力について元担任に聞くと、「分からない」と答えました。

 

なお、鴻巣市教育委員会が作成する後の資料には、この会話の中で「元担任が『アンケートはある』と言った」と書かれています。実際には先の通り、教頭が「アンケートはない」と即答をしています。何もかもが事実と異なります。もしアンケートがあるのなら、私がそれを見せて欲しいとお願いしないはずがありません。鴻巣市教育委員会はただ「アンケートがあると担任が言った」という内容だけを記して、そのアンケートの内容や、私の対応などについては一切記していません。

 

私にとって、このようないじめ問題に自分だけで対応することは経験のないことでした。それまで、私は学校やその関係者が、まさか生徒よりも自分たちの都合を優先するなどとは考えてもいなかったのです。しかし、中学校では校長を始めとして事実と異なることを容易に証言し、この小学校でも「アンケート調査結果が存在しない」という不自然な話をするので、私は大きな不審を覚えました。

 

「アンケート調査」は文部科学省ガイドラインを明確に提示しています。「不登校重大事態に係る調査の指針案」において、「アンケートの質問票の原本等の一次資料の保存期間は最低でも当該児童生徒が卒業するまでとし、アンケートや聴取の結果を記録した文書等の二次資料及び調査報告書は、指導要録との並びで保存期間を5年とすることが望ましい。」と明記されているのです。例えば、東京都の場合はアンケート結果の一次資料も原則3年間保存すると定めています。しかし、小学校はアンケート調査の実施から1年程度しか経過していないにも関わらず、ないと即答しました。

 

この後、鴻巣市教育委員会と中学校が、指針に反して被害者である私たちへの確認を一切取らず一方的に作成したいじめ重大事態に関する調査報告書には、「小学校のとき、~(息子)にいじめはなかった」とはっきりと明記されていました。このような理不尽な仕打ちを受けるなんて、本当に私は思ってもいませんでした。

 

今になって思い返しますと、2019年11月時点で、校長、教育委員会を経験された方から、次のようなメッセージを頂いていました。

 

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教育委員会は学校への指導行政でもあるが、争いの面でも件数を重ねているしスタッフも労力も仕事として勤務時間内にかけられるプロですから、十分に自分たちに有利になるように証拠をそろえて準備します。理論武装だけではなく、事実の積み重ねをします。そこでは学校から様々な記録を上げさせます。日時を追って詳細に書いてあるでしょう。それをよく見るとウソが混じっている可能性があります。誇張もあるかもしれません。少なくとも、校長とか教頭とあなたのやり取りの中に嘘が入る、学校側の対応の正当性を強調したり、あなたの言い分を曲げて書いたり、あなた側に有利な点を削除しているかもしれません。あなたの話の一部を切り取って扱い、他の重要なところは捨てる記述もあるかもしれません。事実として扱われる事項の中に、事実でないものが入る、事実が抜け落ちることが考えられます。そこは、あなたは見落としたり、あきらめて事実を曲げてはいけません。反論しなければなりませんね。もちろんあなたが出るのではなく、弁護士が前面です。弁護士も教育委員会から示された資料を本物とみるでしょうが、実は嘘が混じる可能性が十分あります。隠ぺい体質は、これまでもいろんな学校、教育委員会であって報道されてきましたね。体験的に分かるのですが、教育関係にはそういう体質があるんです。

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間違ったことを間違ったと認めて正す、それが教育のすべての原点ではないでしょうか。しかし、私たちは小学校、中学校、鴻巣市教育委員会といった教育の専門家たちである人たち全員から、その真逆の対応をされ続けました。

 

私たちはこの時点でも、彼らの間違ったことを隠し、歪め、訴える者の声を踏みつぶそうとする周囲の人たちにとても苦しめられていましたが、後になって、それがまだほんの序の口に過ぎなかったことを思い知らされました。

 

(次回へ続く)